特急東海3号
小学生の時だったか、家族で急行電車に乗り、旅行へ行ったことがあった。
行き先は、静岡。
確か三保の松原へ行ったり、駿府城址へ行ったり
色々したんだろうけど、実はあまりよく覚えていない。
うっすら覚えているのは、父親に屋台で売ってた焼き蛤を食べてみようと言われたが、
食べたことのない焼き蛤をいやがり、だだをこねて普通にたこ焼きかなんかを食べた
記憶、ぐらいだ(親に少しもらった焼き蛤は意外と美味しかった)。
頭の中いっぱいだった思い出が、頭の中で目次をつけて整理され、
だんだんと情景を思い描けなくなってしまうのは、少し悲しいことだなぁ、と思ったりもする。
3月18日にJRダイヤ改正があって、
新型車が導入されたり、少し便利になるとともに、
いくつかの列車が廃止となった。
この写真の、特急「東海」もその一つだ。

家族旅行へは、この列車が急行だったころ、
これよりも古い形の列車の、上部に白いビニールがかかった、4人がけの青いボックス
シートに向き合って座り、温かいお茶のビニールパックをもみながら、冷凍みかんか
なんかをつまみながら、笑いながら、行った。確か雨だった。
実際はそんなこと全然ないんだけど、
僅かしか残っていない思い出とさよならするような、
そんな気持ちになって、
16時23分
横浜駅にすべりこむ
最後の列車に、ありがとうを言いに行くことにした。
ホームのアナウンスが
「本日をもちまして、この列車は廃止となります。ご愛顧、有り難うございました」
と、言った。
あの頃には戻れない。
ノスタルジーは甘美すぎて、浸り続けてしまいそうになる。
でも、今、この時間は確実に流れていて、
そこに乗って、生きている自分がいる。
いやむしろ時間を乗せて、僕らが走っているのかもしれない。
色んな経験をさせてあげようとしてくれた両親がいた。
どれだけの愛で、守られて過ごした時間だっただろうか。
親になったら、分かるのかな。
僕はどんな家族の姿を、築くのだろうか。
発車ベルが鳴った。
そう多くではない乗客を乗せて、東海は行ってしまった。
じんわりとした涙が乾くのを待って、
新型の電車に乗って、家路についた。
2007年03月23日 01:14
※このサイト内の文章、写真などの無断転載、使用を禁じます

