「ひばり」発売によせて

旅に出る理由なんて大体後付けで、ほとんど本能みたいなものだった。
休みをとるのに理由をつけるのがそもそも胡散臭いんだよな、なんてブツブツ言いながら家を出た。

大人の日常はだいたい捩(ねじ)れている。
政権だって時代だって、盛大な捩れっぷりである。今まで生きてきて僕も、理由づけして動くことや意味付けすることに無意識に縛られているのかもしれない。

時には必要なのだ。それは分かっている。
情報戦。力関係。立場。空気。取り引き。筋というもの。段取り。本音と建前。
猥雑に絡み合った意図と意図を上手に編み込んでいる人もいるけど、焼き切れそうになっている大人も沢山。
子供だってその背中をしっかりと見ている。僕はそこから単純に抜け出して、一度俯瞰してみたくなった。

各駅列車の窓から、舞い上がり飛び越えていく鳥が幾度となく見える。
落ちたかに見えてヒヤッとするがすぐに旋回し、違う空へと針路を変え、更に飛ぶ。

心は正直だ。
楽しいものは楽しいし、嫌なものは嫌だし、欲しいものは欲しい。
泣きたい時は泣きたい。

そんなわけで、長い旅路の中で次に出す作品のテーマは「正直に歌うこと」に決めた。

旅から帰って、足りない頭で精一杯理屈をこねる。沢山の人に協力してもらいたくて説明を重ねる。
一人でも多くの人に聴いてほしいからさ。それもまた、嘘のない正直な気持ち。

「理由わかんないけど、あのアルバム聴きたい」
そう思ってもらえたら本望なんです。

捩れを少し、元に戻すお手伝いができたら。

オオゼキタク